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後期研修に当たって
精神医学は文字通り、心を視る学問です。その心を視るとはどういうことか。それは目の前にいる患者の眼差し、表情、動作、身繕いなど、その一挙手一投足を真剣に見つめ、入念な面接を繰り返しながら、その異変を構成している精神医学的徴候を丹念に解き明かしていくプロセスです。これが精神医学の「臨床」というべきものであり、大変に興味深いものです。精神医学において、臨床的な客観徴候の大部分は患者そのものから表出されるので、このプロセスなくして精神医学の臨床は成立しません。その次に生じてくる興味は、おそらく眼の前にある精神現象の異変がなぜ起こってくるのかということに向けられてくるはずです。つまり、精神現象 一WHYという訳です、患者をよく診れば診るほど、「何故」という疑問は深くなってきます。これを解き明かしていくプロセスが「研究」です。疑問が素朴であるほど重要な研究テーマになることが多く、従って患者を目の前にした時、常に「何故」という姿勢が重要になってきます。研究というのは大変なエネルギーを必要とします。安易な努力からは安易な成果しか上がらないということ。例えそれが素朴なテーマであっても、そこにある「何故」を解き明かすためには、努力をし、汗をかく。この姿勢がなければ研究は成功しないと思います。後期臨床研修の間、まず精神医学独特の臨床の醍醐味を味わって下さい。そして、できるだけ多くの「何故 一WHY」を胸のなかに温めておいて下さい。このことは次のステップに進む時必ず役に立つと思います。
教授 古茶大樹
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